午前、『家と人。』17号が納品となる。
諸事情で1カ月遅れの発行。
数週間前から発送準備を進め、今日だけで430冊を旅立たせた。
三人がかりで、冊数、同封用紙や振替用紙を確認しながら
袋や段ボールに本を詰め込み、
山のように積まれた荷物を待ち構えていた宅急便のおにいさんが
次々にクルマに運び込んでいく。
毎回のことだが、納品日、本を開く気力はすでにない。
文字通り、紙にアナの空くほどのゲラを確認し、校正を徹底した。
それでも、発送を終えてほっとしたせいか、夜、パラパラとめくってみる。
本当に文字の多い本だと改めて思う。
文を寄せていただいた執筆者は、今号だけで27人。
とにかく文字を書きたくてしょうがない、といった人ばかりで
文字数オーバーは毎度のこと。「もう2ページほしい」と要求してくる人までいる。
他の雑誌に比べると圧倒的にビジュアルは少ないが
その分、情報量としては、
この1冊だけで200ページの新刊本を超える文字数がある。
家のことを詳しく勉強したいという読者の期待は、決して裏切らない。
以前もここに書いたが、今号は特に思い入れの深い号となった。
編集過程で、これまで十数年間お世話になってきたN先生が亡くなり、
RIVER BOOKSとして3冊の画集を上梓した
K画伯の遺作に巡り合うという、数奇な偶然があった。
その2本を特集としてまとめ上げることで
お二人に捧げるrequiem、hommageとした。
企画から取材・撮影、打ち合わせ、全て一人でのスタートであった。
当初は体調も悪く、何度もくじけそうになったが、
取材対象の方々から逆に、大きな力をいただいた。
8月から入社したアシスタントさんも
地道な努力の末に、わずか1カ月で編集業務から事務処理までマスター。
後半は、現場での撮影までサポートしてくれたのは、
計り知れないほどの助けとなった。
デザイナーのNさんは、何度徹夜したのだろう。
表紙や特集2の撮影を担当してくれたカメラマンのMさんにも、感謝だ。
発送を終えてすぐに、故N先生宅にお届けした。
いちばん最初に、読んでいただきたかった。
奥様のR子さんは、玄関先にぺたりと座り込んだまま、
特集ページをそっと開き、食い入るように誌面を眺めていらした。
ぼくは「では、また」と、すぐにおいとま。
クルマに乗り込んだ瞬間、涙があふれ出てきた。10メートルほど行った角で
いったんクルマを止め、グシュリとはなをかんで、また走った。
魂の奥深いところにある何かを表現したいとき、
ふいに言葉を失って、黙り込んでしまうようなことが、年とともに多くなる。
感謝の言葉が心のなかに渦を巻いてはいるが
今日はここに書くのが精一杯。
この本に関わっていただいた全ての方々に、心から御礼申し上げます。
神様、力を与えてくれて、ありがとう。