リヴァープレス社
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ライフログ
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あのB型母はきっと忘れているに違いない。 でも、ぼくは彼女からもらったお守りをいまも大切に持っている。 ふだんは仕事のカバンのなかに入れてあり、 出張や旅のときには必ずバッグのなかに入れて持ち歩く。 中学1年のときにもらったものだから、ちょうど40年前のものだ。 その年の夏休み。 ぼくは、小5のときに買ってもらった自転車で、 親戚のいる旭川までの一人旅を決行した。 ジェット号と名付けた愛用の自転車は、安っぽい3段ギアこそ付いていたが 何といっても子ども用の自転車には変わりなく、 いま考えると、富良野経由で片道100キロを超える行程には、無謀でしかなかった。 案の定、富良野を過ぎて美馬牛峠を超えるのは死ぬほど辛く、 途中何度も自転車を降りては押しながら、ポロポロ涙を流して、この旅を後悔した。 旭川の親戚の家にたどり着いたときには、 お尻が真っ赤になって腫れ上がり、足は硬い棒のようになって、 Tシャツや半ズボンからは汗が塩となって粉をふいたようになっていた。 生まれて初めての一人旅であった。 B型母は、この日のためにとお寺からお札をもらって、 それを入れる袋を縫って、その袋をきれいなビーズで装飾し、 紐まで付けて、首から下げられるようにと持たせてくれたのである。 ところが、平地の走行であれば気にはならないものの、 坂道や峠で立ち漕ぎすると、 お守りはブーラブーラと胸のところで左右に振れ、じゃまくさくってしょうがない。 途中、首から外してリュックに入れることにしたが、 峠の上り下りのときには、あまりの辛さに なぜか「こんな役立たずのもん、持たせやがって」と逆恨みとなり、 無事に家に帰ってからは「お守りなんか、いらんかった」 とB型母に突っ返したのであった。 そのとき。 小さな旅を一人で成し遂げた、小さな誇りのようなものが芽生えていた。 が、突っ返したその瞬間、 B型母にしては珍しく寂しげな顔を見て、 「このお守りのおかげもあったかもな」と、すぐにまたそれを引き取ったのだった。 生意気なことをいってしまったと、少し後悔もした。 以来ぼくは、どんなときでもこのお守りを大切に持ち歩いてきた。 隣町への高校の通学時にも、 ヨコハマの大学に行ったときにも、日本一周のヒッチハイクの旅のときも、 20カ国を旅したときも、 そして、いまでもこのお守りはカバンのなかに入れて持ち歩いている。 出張のとき1、2度忘れたことがあったが、 まるでパンツをはき忘れてきたかのようで、 どこかスカスカしたような気分になるから不思議なものである。 毎年この時期になると、このB型母から、お札の束がどっさりと届く。 お寺の節分行事のときに頼んであるらしく、 家内安全、事業繁栄、交通安全、悪星退散など、数種類に及ぶ。 数年前までは、これらが送られてくるたび 「こんなにお札ばっかで、いったい、どーすりゃいいいんだっ」 と文句ばかりいってきたが、 その都度「おまえのようなバカ者は、神さん、仏さんに守ってもらわんとな!」 と逆ギレされ、仕方なく鞘を納めてきた。 捨てるにも捨てられないので、家や事務所の棚の上に置いたりしている。 夕刻、「お札、届いたから」とB型母に電話をかける。 あれこれ話したあと、 「おまえ一人で生きてると思うな。神さん、仏さん、みんなに守られてんだ」 クソババア、また調子にのりやがって…と、 ちょっとムッとしたが、最後は小さな声で「ありがと」といえた。 人を突き動かすのは、信仰の深さなどではなく、 生身の人間の愚直なまでの愛情かもしれぬ──とこの頃、 この人と話していて 思ったりもするが、やっぱりなんか、スッキリしないな。 ![]() ※ 日曜日だが仕事の日。 今日は朝から、デザイナーさんと表紙の検討をする。 8種類のゲラを出してもらうが、意見が合わず。今回はいつになく難航。
by riverpress
| 2009-02-15 22:41
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